" Trace of flood and Collection " Haruka SHIMA Solo Exhibition
2019年5月21日(火)〜6月1日(土)
12:00〜19:00(日曜・最終日〜18:00/月曜・休)
私は「記録すること」と「絵を描くこと」を同時に行うことで、絵画の可能性を探っている。
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絵のことを考えながら家事をしていたときに、牛乳パックの底とふいに目があった。
牛乳パックの底が「目に入った」のではなくて、牛乳パックの底と「目が合う」ような、そんな感じがした。
もしかしたらそれは、牛乳パックの底が一点透視図のように見えたからかもしれないし、
カメラのファインダーを覗いた時のような、焦点をそこに合わせる感覚があったからかもしれない。
ともかくそこに絵を描こうと思った。
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先史時代の壁画のことを考えてみる。野牛などの動物が多数描かれ、そこで狩りの成功を願ったりと、呪術的な側面が取り上げられることが多い。
それも興味深いと思う。でも私が特に気になったのは、絵画(壁画)を通して日常生活のコミュニケーションが図られていたという事だ。
つまり、絵画そのものが実際の世界と非常に密接なつながりを持っていたということが伺える。
だがそのコミュニケーション上で、壁に描かれたその「図」を、果たして誰しもが正確に判断・理解できていたのだろうか。
それらの疑問から「不完全な記録術」というキーワードが降りて来た。
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現代における「不完全な記録術」とは何なのか。
中でも、資料写真は、古代の人々が岩陰などに絵で示そうとした情報に似ているように思う。
「保存する」ことを念頭に撮影されたものだということ、そしてある事実を共有するために、作為性や作家性を排除して撮影したものだということ。
その二つが記録術の分野において、とても重要視されていることだ。
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私は近年しばらく、博物館に収蔵されているものや、資料写真に収められているような物たちを描いている。
しかし、資料写真のイメージの多くは理解しがたい。そこに写されている対象は「ある事実を共有するために」写されているが、
単色で塗りつぶされた背景やグラデーションがどこか不自然に目に映る。
なぜなら、資料写真の多くはその道具が使われていた場所や状況から撮影スタジオに移動させられて撮影されているからだ。
本来みえるはずの状況(風景)が撮影用の背景紙に変わってしまっていることで、歴史的、文化的背景から切り離され、
一体それが何のための道具かどういった状況で使われていたか等の文脈が、写真のみでは非常にわかりにくい。
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日常生活の中で、”使うこと”に価値を持っていたもの。それらが長い年月の中で、ある種の忘却を経て、”視覚的”な価値を持つようになった。
こう気付いた時、私の中で資料写真を描く事は「不完全な記録術」というものを絵画の中で考える重要な窓口となりつつある。
-制作メモより 嶋 春香
嶋 春香 SHIMA Haruka
1989 北海道生まれ
2012 京都造形芸術大学 美術工芸学科洋画コース 卒業
2014 京都市立芸術大学大学院 美術研究科修士課程 絵画専攻油画 修了
▶個展
2018「デラシネ」(VOU/京都)
2017「Author」(HAGISO/東京)
2016「MEET/MEAT」(Gallery PARC/京都)
2015「Half-length」(京都的芸術廉价中心・Artothèque Gallery/京都)
2013「Portrait」(京都市立芸術大学 小ギャラリー/京都)
▶主なグループ展
2018「シェル美術賞2018」(国立新美術館/東京)
2017「rhizome」西條茜+嶋春香 二人展
(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都)
「未来の途中プロジェクト オブジェダール」(京町家キャンパス ににぎ/京都)
2015「93.未来の途中の先を夢見る。」(ARTZONE/京都)
「京都銀行美術研究支援制度 15周年記念展覧会 “京銀コレクションの15年”」
(京都銀行・金融大学校桂川キャンパス/京都)
「Sign of Happiness」(Antenna Media/京都)
「これからの、未来の途中ー美術・工芸・デザインの新鋭11人展」
(京都工芸繊維大学 美術工芸資料館/京都)
2014「KUAD graduates under 30 selected」
(京都造形芸術大学 ギャルリ・オーブ/京都)
「アートアワードトーキョー丸の内 2014」(行幸地下ギャラリー/東京)
「京都市立芸術大学作品展」(京都市立芸術大学 アトリエ棟/京都)
「作品中!2014」(ギャラリー16/京都)
2013「AUTUMN HURRICANE」
(京都市立芸術大学 小ギャラリー・大ギャラリー/京都)
「Reunion 0.1」(京都造形芸術大学 Pr PROJECTS room/京都
2012「RADICAL SHOW 2012」(渋谷ヒカリエ8/ CUBE 1, 2, 3/東京)
「PHANTASMA -ファンタズマ」(Antenna Media/京都)
「アートピーポーマッピン」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都)
▶受賞歴
2018 「シェル美術賞2018」入選
2014 「京都市立芸術大学作品展」大学院市長賞
2013 「京都銀行美術支援制度」2013年度購入作品選抜者
2012 「京都造形芸術大学卒業制作展」学科賞
▶パブリックコレクション
京都市立芸術大学
京都銀行
▶その他参加プロジェクト
2017
<プロジェクト> 京都市立芸術大学×ホテルグランヴィア大阪 アートワークスプロジェクト 2017-2018,2018-2019(客室展示)
2017
<滞在制作> 池袋要町スタジオ レジデンスプログラム
2016
<ファイルイベント> almanac15 “depositors meeting 14″( art & river bank/東京) ファイルイベント参加