不明へ Ⅳ
2024年3月12日(火)〜3月30日(土)
12:00〜18:00(月曜・休)
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明晰と勇敢が跋扈しているので、警戒しなければならない。明晰さは、往々にして、多くのものを抑圧し排除することによって成立する。また度々、一番安全な場所に立って、勇敢に、そして饒舌に語られる。一方、明晰さと勇敢さの背後に眼を凝らせば、平穏な日常に思いがけず不明を見つけ出し、震えることであろう。不明の物質と空間を見ようとする試みこそ、私の仕事である。
「死霊」の作家埴谷雄高は、短編小説「深淵」の冒頭で次のように書いている。「パスカルにはひとつの深淵があって、例えば、腰かけている肘掛け椅子からふと左手の床を見下したりすると、そこにぽかりと口を開いた暗い、底知れぬ深淵を認めて愕然とするといった事態が、私にはほとんどそのまま理解できるように思われる。」パスカルの深淵とは、日常に遍在する不明にほかならない。底知れぬ深淵を前にして、たとえ死の観念に苛まれようと、震えながら踊り続けろ。
佐々木昌夫