種と個
2024年2月6日(火)〜2月11日(日)
12:00〜18:00(月曜・休)
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由井武人 個展「種と個/Species and Pieces」」 ステートメント
きっかけは数年前の年賀状で、同じものを描いても同じものにならないということを何かおもしろく感じた。同じモチーフで同じ形が並んでいるのに、絵具の滲み具合やその時の自身の手の動きで少しずつちがったものになっている。ポストに入れて届いてしまえばそれは一枚の個でしかないのに、こうして一堂に並べてみると同じ情報を持つそういう種(しゅ)に思えてくる。この構造は何かに似ていると思った。人間をはじめとする生物も、個として独立しながらも種としての属性を持っている。
絵画も色や形、モチーフなどなんらかの情報を持つ。しかし、それを絵具やキャンバスなど物質として具現化しようとした時に、使う素材や技法によってその情報の発現の仕方に微妙な差異が生まれてまったく同じものにはならない。
絵画は一枚の完結した個としてだけでなく、情報を引き継ぎながらも差異をもつ連続した種としても存在しているのではないか、描きながらそういうことを考えていた。そして個は、種の一つの明確な目的(コンセプト)に沿って誕生してくるというよりも、自然や偶然性を含みながらある程度ランダムに発生することで種を超えようとしているのかもしれない。